恒常的施設(PE)について

1.PEとは

(1)定義

PEとは、「事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所をいう。」要するに、外国企業が相手国内で事業を行う一定の場所を指します(支店、工場の固定施設など)。

(2)留意点

①子会社は、親会社とは別の企業であるため、通常はPEに該当しません。
②固有施設を有する場合であっても、その活動が情報収集や市場調査などの準備的・補助的活動のみである場合は、PEに該当しません。
③国内にPEが無く、外国法人が利子・配当・使用料等の投資所得を受領する場合は、所得税の源泉徴収だけで我が国の課税関係が完結します(←PEの対象となる所得は事業所得)。

2.PEが必要な理由

非居住者(日本)企業が中国の国内に上記のようなPEを保有しており、そこで発生した収益が中国源泉の収益と認定された場合、法人には中国の企業所得税が課税され、そのPEで業務を行い報酬を得た従業員には個人所得税が課税されます(PE課税)。

このように課税の有無を判断するために、PEが必要になってきます。

なお、日本において、外国税額控除を適用することにより、中国で課された所得税の全部又は一部の還付を受けることが可能となります。

3.対中国のケース

(1)基本的なルール

租税条約を締結した二国間では、「PEなければ(事業所得には)課税せず」というルールがあります。

→日本企業が中国国内で事業活動を行っても、中国国内にPEを有しない場合は中国で課税されません。

(2)日中租税条約におけるPEの類型

日中租税条約では、PEの類型を以下のように定めています。

類型 原則 例外(除外規定は(3)参照)
①具体的な固定施設 事業の管理の場所、支店、事務所、工場、作業場、天然資源の採取場所等  
②工事PE 建築工事現場又は建設、組立工事、据付工事もしくはこれらに関連する監督活動のうち、6ケ月を超える期間存続する場合。  
③役務提供PE 12か月の間に合計6ヶ月超の期間にわたるコンサルティング役務提供契約(※1) 機械・設備の販売または賃借に係るコンサルティングはPE課税取引とされない(※2)
④代理人PE 売買契約締結権を有し継続的に代理人として受注行為を行う者(※3) 独立的地位有する代理人はPEとされない(※4)
(※1)建設工事だけをPEと規定していると、企業の中には中国で直接自社が建設工事に携わらず、下請業者に工事を施工させ、自社が指揮監督やコンサルティング業務のみを行うことで、「自社は中国で建設工事そのものは行っていない(すなわちPEをもっていない)」と主張し、中国でも課税を逃れようとする可能性も出てきます。ゆえに、このような租税回避的行動を防止するため、条約で明記しています。
(※2)日本の居住者である機械設備の販売者又は賃貸者が、その雇用者又は要員を派遣し当該設備の販売又は賃貸に関連するコンサルティング業務を中国内で行っている場合のみ、例外規定(PEの除外)を適用します。従って、機械設備の販売者又は賃貸者が、プロジェクト全体の指揮権を有する場合又は全面的に技術責任を負う場合は、当該業務は②工事PEに該当し、当該業務が6ケ月超継続する場合はPEとみなされます。【国税函(1977年)429号通達要旨より】
(※3)日本企業が中国に物理的な場所や施設を持たなくても、中国内で日本企業が代理人を使ってビジネスを行っている場合は、この代理人そのものが日本企業のPEとみなされます。
(※4)日本企業A社が代理人を使って中国でビジネスを行っている場合でも、その代理人がA社以外の会社の代理人もしているなど、A社のために継続して代理業務をしているわけではない場合、この代理人はA社のPEとはみなされません(つまり、中国で独立代理人を通じて得た所得は中国では課税されない)。

(3)除外規定

上記表中の規定にかかわらず、PEには以下のことは含まれません。

①企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。
②企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。
③企業のために、物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
④企業のために、その他の準備又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行い一定の場所を保有すること。

(4)その他個別論点(駐在員事務所がPEと認定されるケースに注意が必要!)

本来駐在員事務所とは本国にある本社のための情報収集・連絡業務を行うためのものであり、そもそも営業活動が認められていないのが一般的です。そのため、駐在員事務所は租税条約でいう「PE除外規定」に該当し、例えばA国に存在する駐在員事務所は、日本の本社がA国内に保有するPEとはみなされません。
しかし中国の場合、駐在員事務所であっても実際は営業活動を行っているケースもあります。そのため中国の通達(国税発(1996)第165号)では以下のような活動を行っているケースについては、たとえ形態は駐在員事務所であっても、当該駐在員事務所は、日本の本社が中国内に保有するPEであるとみなし、この駐在員事務所が獲得した所得に対して中国側で課税されることになります。

①広告会社が設立した駐在員事務所が、広告の製作請負や代理業務を行っている場合
②コンサルティング会社が設立した駐在員事務所が各種サービス活動を行っている場合
③駐在員事務所が顧客に提供する中国での課税対象業務活動等
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