日本における所得課税の範囲と二重課税の排除について
日本における所得課税の範囲
日本における所得課税の範囲について
①日本に居住している人の場合、
「全ての所得」に納税を求め(つまり、居住者に対して全世界所得課税)、
②日本に居住はしていない場合でも、日本から所得を発生させている人なら、
日本で発生させている所得にのみ納税を求めています。(つまり、非居住者に対して国内源泉
所得のみ課税)
国際課税の課税範囲を考える際には、この居住性(居住者・内国法人、非居住者・外国法人)、源泉性(国内源泉所得、国外源泉所得)の要素が重要になってきます。
日本の税法において、国際課税の課税範囲を居住性・源泉性の観点からまとめますと、
居住者・内国法人は「国内源泉所得(下表A)+国外源泉所得(下表B)=全世界所得」、
非居住者・外国法人は「国内源泉所得(下表C)のみ」となります。
国際課税の課税範囲(日本の税法)
○:課税・×:非課税 |
居住性 |
||
居住者・内国法人 (居住地) |
非居住者・外国法人 (源泉地) |
||
源泉性 |
国内源泉所得 |
A:○ |
C:○ |
国外源泉所得 |
B:○ |
D:× |
二重課税の排除について
では、なぜこのように居住性と源泉性の要素が重要になってくるのでしょうか?
それは、非居住者・外国法人が他国で所得を稼いだ場合、所得の源泉地(上記C)だけでなく、非居住者・外国法人の居住地でも国外源泉所得として課税されるため(上記B)、二重課税の問題が発生からです。以下簡単な具体例を用いて説明します。
W国の内国法人XがY国に海外支店Zを設け、Y国の国内源泉所得を得たとします。 この場合の課税関係は以下の通りであり、Y国所得100が二重課税される事になります。
(1) Y国が外国法人であるX国法人の支店ZのY国所得(上記C)に対して課税
(2) W国は内国法人である法人XのW国所得(上記A)及びY国所得(上記B)の合計に対して課税
なお、二重課税を排除する仕組として日本では原則として「外国税額控除」と「租税条約」を採用しています。
「外国税額控除」は居住地国(上記W国)で、源泉地国(上記Y国)での外国税額を調整することで二重課税を排除する方法です。
一方、「租税条約」は源泉地国(上記Y国)で、外国法人(上記海外支店Z)に対する課税の減免により二重課税を排除する方法です。